「限度額適用認定証を出したのに、請求が限度額より高いんですけど……」
これは、私が窓口で何度も聞かれてきた質問です。
医療事務を20年しています。入院の会計をお渡しすると、領収書を見て不思議そうな顔をされる方が本当に多いんです。
理由ははっきりしています。限度額に含まれないものがあるからです。
これを知らないまま入院すると、用意していたお金が足りなくなります。今日は、その中身を窓口の側から説明します。
まず、限度額のしくみ
医療費が高額になったとき、ひと月の自己負担には上限があります。高額療養費制度です。
昔は、いったん窓口で全額払って、あとから申請して返してもらう流れでした。限度額適用認定証を先に出しておけば、窓口の支払いが最初から上限までで済みます。
いまはマイナ保険証でも同じことができます。健康保険証の利用登録をしたマイナンバーカードで、オンライン資格確認を導入している医療機関にかかれば、限度額の情報が病院に伝わるので、認定証の申請はいりません。
窓口では、読み取り機に「情報提供に同意しますか」という画面が出ます。私はいつも「同意する」を選ぶようにおすすめしています。ここで同意しないと、限度額の情報が病院に届かないからです。
マイナ保険証がなかったころは、認定証を出さないまま入院して、窓口でいったん高額を払うことになる方がかなりいました。その意味では、ずいぶん親切な仕組みになりました。
それでも、請求が限度額より高くなる理由
ここからが本題です。
高額療養費の対象になるのは、健康保険が使える診療の自己負担分だけです。保険の外にあるものは、対象になりません。
そして入院の請求書には、その「対象外」のものが一緒に載っています。
- 食事代
- 差額ベッド代(自分の希望で個室に入った場合)
- 診断書などの文書料
- 保険の効かない診療
「限度額の金額=入院費の総額」だと思っている方は、本当に少なくありません。領収書の合計を見て「限度額を超えていますよね?」と聞かれるのは、たいていこのケースです。
食事代だけで、8千円近くになりました
いちばん見落とされやすいのが食事代です。
入院中の食事には、1食ごとに決まった自己負担があります。1日3食なので、入院が長くなるほど積み上がります。
我が家の例です。長女が10日間入院したとき、食事代は1食260円でした。3食×10日で、それだけで8千円近くになります。
しかも、この金額はその後も引き上げられています。いま入院したら、当時よりもっとかかります。食事代は改定が続いているので、最新の金額は加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険など)で確認してください。
ちなみにこの食事代、高額療養費の対象にはなりませんが、確定申告の医療費控除では対象になります。同じ「医療費」でも、制度によって扱いが違うので、混同しやすいところです。
入院費は「限度額+α」で用意する
だから入院のお金を準備するときは、限度額だけで見積もらないでください。
我が家の計算のしかたは、こうです。
- 限度額(ひと月の上限)
- + 食事代(1食あたりの負担 × 3食 × 入院日数)
- + 個室を希望するなら、差額ベッド代(1日あたり × 日数)
この3つを足しておけば、退院の日に慌てません。
住民税が非課税の世帯は、マイナ保険証でも申請が必要です
ひとつ、大事な例外があります。
低所得(住民税が非課税など)に当てはまる方は、マイナ保険証を使う場合であっても、「限度額適用・標準負担額減額認定証」の申請が必要です。
この認定証は、名前のとおり限度額だけでなく食事代(標準負担額)の減額にも関わります。当てはまりそうな方は、入院が決まった時点で加入先の健康保険に問い合わせてください。
まとめ|入院が決まったら、まずやること
窓口から見ていて、いちばんもったいないのは「知らなかったせいで、当日払うお金が増える」ことです。
入院が決まったら、この3つだけ確認してください。
- マイナ保険証を使うなら、読み取り機で「同意する」を選ぶ
- マイナ保険証がなければ、限度額適用認定証を先に申請しておく
- 用意するお金は限度額+食事代+(個室なら差額ベッド代)で見積もる
限度額そのものの計算は高額療養費制度の記事に、子どもが入院したときの手続きは子どもの医療費の記事に書いています。
入院が決まったときの心配ごとは、それだけで十分多いですから。お金の不安だけでも、先に減らしておいてくださいね。
