病院の受付でマイナ保険証をかざしたら、「同意しますか」という画面が出てきた。
これ、押していいの? 押さないとどうなるの? なんで毎回出るの?
そう思いながら、とりあえず「同意する」を押している方、多いと思います。
私は病院の受付に20年いますが、あの画面をちゃんと理解して押している患者さんは、ほとんど見たことがありません。みなさん「とりあえず同意」です。そして正直に言うと、母が入院したとき、私もそうでした。
先に結論だけ。
あの同意画面は、押しても押さなくても、医療費の上限額(高額療養費)には関係ありません。上限額のほうは、かざした時点で自動的に病院に届いています。同意を聞かれているのは「過去のお薬や手術歴の情報を、この病院に見せていいか」です。
「限度額の同意」は2024年10月になくなった
少し前まで、受付の機械には「限度額情報を提供しますか」という画面がありました。ここで「提供する」を押すと、病院にあなたの上限額(区分)が伝わり、窓口の支払いが最初から上限額までになる仕組みでした。
この画面は、2024年10月7日から省略されました。厚生労働省の案内では「表示を省略し、同意不要に」とあります。つまり今は、マイナ保険証をかざすだけで、限度額の情報は自動的に病院へ届きます。
限度額適用認定証を事前に申請して持っていく必要も、ありません。厚生労働省のページにも「マイナンバーカードを健康保険証として利用すれば、限度額適用認定証がなくても、限度額を超える分を支払う必要がありません」と書かれています。
自分の上限額(区分ア〜オ)がいくらかは、限度額適用認定証の「区分」って何?に書いています。制度そのものは高額療養費制度を知っていますか?をどうぞ。
今出ている「同意しますか」は、お薬と手術歴の話
では、今も毎回出てくる画面は何なのか。
「過去の医療情報等の提供に同意しますか【手術/診療・お薬/健診】」——これです。文言は病院や機械のメーカーによって少し違いますが、聞かれている中身は同じで、過去に処方されたお薬、手術の記録、健診の結果を、この病院の医師や薬剤師に見せていいですか、という確認です。
押すとどうなる
医師や薬剤師が、ほかの病院で出されたお薬や健診の情報を確認できるようになります。厚生労働省は「より良い医療が受けられます」と説明しています。たとえば、別の病院で出ているお薬との飲み合わせを、自分で説明しなくても見てもらえる、ということですね。
押さないとどうなる
その病院にはお薬や手術歴の情報が共有されない、それだけです。上限額には何の影響もありません。「同意したくない」という方は、押さなくても、窓口の支払いは上限額までで止まります。
なぜ毎回出るのか
医療情報を見せる相手は「今日受診するこの病院」なので、受診のたびに確認する仕組みになっています。ただ、2025年2月からは「前回の同意状況を引き継ぐ」という選択肢ができて、同じ病院なら前回と同じ答えをそのまま使えるようになりました。
窓口から見た本音|「とりあえず同意」で困った人はいません
20年受付にいて、あの画面で「これ何ですか?」と聞かれることは、ほとんどありません。みなさん、とりあえず押します。そして、それで困った患者さんを、私は見たことがありません。
母が入院したとき(2025年1月)のことです。病院から「何か手続きは必要ですか?」と聞かれたので、マイナ保険証をかざして、画面の案内どおりにボタンを押してもらいました。書類は1枚も書いていません。10日ほどの入院で、退院時の支払いは最初から上限額まででした。
正直に言うと、あのとき押したボタンが「限度額の同意」なのか「医療情報の同意」なのか、当時の私は区別していませんでした。この記事を書くために厚生労働省の資料を読み直して、初めてきちんと整理できたくらいです。窓口にいる人間でもそうなのだから、患者さんが分からなくて当然だと思います。
マイナ保険証が広まる前は、認定証を持たずに入院して、退院時にいったん高額を払い、あとから申請して戻す、という方がかなりいました。娘が入院したときの我が家も、10万円近く立て替えています(入院費が払えないときにできること)。今はかざすだけで最初から正しい額でお会計できる。窓口側から見ても、本当に楽になりました。
それでも確認しておきたい3つのこと
① マイナンバーカードの「健康保険証利用登録」を済ませているか
「かざすだけ」が成り立つのは、利用登録が済んでいるカードだけです。まだの方は、マイナポータルか、病院の受付の機械からでも登録できます。
② 上限額に入らない費用があること
食事代、差額ベッド代、保険がきかない診療は、上限額とは別に払います。「かざしたのに請求が上限より高い」の正体はたいていこれです。くわしくは限度額適用認定証を出したのに請求が高い理由にまとめています。
③ 自分の上限額を、一度だけ知っておく
窓口では自動で処理されるので、覚える必要はありません。でも「入院してもひと月これ以上は払わない」と分かっていると、医療保険がいるかどうかの判断が変わります。給与明細の標準報酬月額か、マイナポータルで一度だけ見てみてください。
まとめ|同意画面は、こわがらなくて大丈夫
限度額は、かざした時点で自動。同意画面で聞かれているのは、お薬や手術歴を見せていいか、だけ。押しても押さなくても、支払いの上限は守られます。
今日やるとしたら、ひとつだけ。お財布のマイナンバーカードが、健康保険証として使える状態になっているか確かめてみてください。それだけで、次に入院や大きな治療があったとき、認定証の申請も立て替えもなく、最初から上限額までの支払いで済みます。
※画面の文言や表示は、医療機関やカードリーダーのメーカーによって異なります。制度の内容は2026年9月時点(厚生労働省「顔認証付きカードリーダーの同意画面の改善」「マイナンバーカードの健康保険証利用のメリット」)のものです。
